
アート、写真、スケートボード、ファッション、ミュージックなど、様々なカルチャーを紹介するフリーマガジン『HIDDEN CHAMPION』。本誌の71号にてディッキーズが特集記事「Life Work」を発信。 スケーターでもあり、運営も手がけるパークビルダーとして茨城を拠点に活躍する、MBM PARK BUILDERSをご紹介します。是非ご覧ください。
“LIFE WORK” FEAT. MBM PARK BUILDERS
茨城県を拠点に、スケートショップ兼スケートパーク〈AXIS〉を運営するパークビルダー集団〈MBM PARK BUILDERS / エムビーエム・パークビルダーズ〉。従業員の大半をスケーターが占めるスケートパーク専門の建設会社である。本場アメリカで使用されている、アール面にコンクリートを吹き付けるREED社製のポンプ車を国内で唯一保有していることからも、パークビルドに掛ける思いは生半可なものではないことが伺える。試行錯誤を繰り返し、スケーターならではの感性を交え、国内最先端とも言える技術を惜しみなく注ぎ込んで作り上げられた上質なスケートパークにはファンも多く、パーク需要が高まると共に依頼の数も増えているようだ。今回取材で潜入したリニューアル中の鵠沼海浜公園スケートパークの現場には、〈CODA Skateboard〉のライダー渡辺 雄士、〈CREATURE〉、〈POSSESSED〉に所属する西川“Capy”誠といったプロライダーを筆頭に、佐々木 優、熱海 誠、河村 慎吾、関谷 翔の6名の職人が施工に入っていた。朝から晩までスケートボードに携わり、好きなことを仕事にして生きている男達に話を聞いた。

アールをコテで慣らす作業がひと段落し、コンクリートが乾燥するのを待つ休憩のタイミング、本来ならば滑りたい気持ちを抑えてもらい、 MBM PARK BUILDERS立ち上げ初期からパークビルドをしている職長・渡辺 雄士を筆頭に、佐々木 優、西川“Capy”誠に仕事とスケートボード、生き方について話を聞いた。

渡辺 雄士
Yuji Watanabe

佐々木 優
Masaru Sasaki

西川 誠
Makoto "Capy" Nishikawa
パークビルダーになったきっかけを教えてください。
Yuji: AXISというスケートパークが地元茨城の龍ケ崎にあって、よく滑っていたんですが、移転にあたり取り壊すことになったんです。自分はAXISの社長がやっている土建屋で外構屋だったりマンションのデカい現場に入ったりという感じで働いていたんですが、AXISを作り替えるタイミングで、地元のスケーター達に協力してもらいながら、見よう見まねでパーク作りをしていきました。
Masaru: 僕も地元がAXISの近くで、会社がポンプ車を買ってAXISの拡張工事をするってタイミングで周りのスケーターと一緒に作業した時期にMBMに入りました。

MBM立ち上げ時と比べてパークビルドのオファーが多くなったと思いますが、
パークデザインのトレンドなどはありますか?
Yuji: 俺らが図面を渡されて作るパークは基本滑りやすいように緩めのアールが多いですね。コンテストで使用されるコースは角度のキツいクォーターは流行らないって印象があります。俺らはキツいアールが好きで、前に一緒に働いていた方なんかもプールとかボウル好きなスケーターが多いので、そこは好みが分かれちゃいますね。
Masaru: 俺らに上がってくる図面を見てると条件が大体決まってきてる感じがします。あと、依頼主がスケーターかスケーターじゃないかという部分で結構変わってくる気がします。スケーター同士だと、自分達がこうした方がもっと面白くなりますよって提案をした時に感覚的に伝わるので。
Capy: 行政相手の仕事も多いので融通が利かないこともあり、うーん?と思いながらも図面通り作って、実際に出来上がったパークを滑ってみるとやっぱりねって事もありますね。
Masaru: やっぱり作り手の立場として心苦しくなるというか、図面通りに作らないといけないという部分で、スケーターとして葛藤が生まれることはたまにあります。
現在施行中の鵠沼のパークはいつ頃完成予定ですか?
Yuji: 今年の7月からこの現場に入って、パークの方は先に出来上がりそうなんですが敷地内の建物が施工の関係で遅れているようなので、来年の5月頃になりそうです。
Capy: 今ぐらいまで出来上がってくると、セクションにコンクリート打設して、乾き待ちのタイミングでテストライドも兼ねて滑れるので、たまに仕事で疲れたってよりスケートの方で疲れる時がありますね(笑)。もちろん仕事はちゃんとしてるのでご安心ください。

自分達で作ったパークだからこそ、
一番最初に滑ることができるというのは感慨深いですね。
Masaru: 作業中からこのラインであそこであのトリックをしてって頭の中で考えてます。
Yuji: 最近は、どこから作れば先に滑れる場所が出来上がるかってことを逆算して施工するようにしています。
Capy: スケートパークを作るってことはスケートボードができる環境になるわけで、やったらやっただけ自分に返ってくるのが分かる仕事というか、作ったことによって、滑りたいって気持ちにさせられます。
Yuji: スケートも上手くなったよね。あと、この現場にエリック・ドレッセンが来たんですよ。
Capy: 富士山と夕陽をバックにしたスネークランを見て「Ohhh!! なんだこれは!」ってすっごいテンション上がってましたよね。
Masaru: 山木 真(SANTACRUZやOJ Wheels、エリック・ドレッセンのボードグラフィックも手掛ける。)とFABRICの小島さんが連れてきてくれて、このパークで滑ることが日本滞在中の夢だったと言ってくれたのはすごく嬉しいです。

日本各地にパークを作りに行き、ローカルではどうやって過ごしていますか?
Masaru: とりあえず色々なストリートスポットに行きますね。週末は特に面白いですよ。
Yuji: ローカルのスケートショップに行って色々な人に出会えるので本当に面白いです。現場の近くに海があれば釣りをしたりとか。
Capy: スケートして帰りに温泉に入って帰るのが好きですね。雨の日だと仕事もスケートも出来ないので、そういう時は険しい下道を2時間半かけて秘湯巡りをしたり。これは自分なりに仕事とスケートをやっていく中で、ひとつのミッションになってます。


1年のうち、どのぐらい自分の家に帰ることができるんですか?
Yuji: 地方で長い工期の現場だと半年ぐらいは帰ってこれないですね。今回の現場だとマコトは地元なので家に帰れてますが、俺らは週1ペースでしか帰れないんですよね。

今まで作ってきたスケートパークの中で印象に残っている場所はありますか?
Yuji: う~ん、全部思い入れがあるので選べないですね。最近めっちゃ思うんですけど、極論、スケボーする場所って、綺麗なフラットがあってカーブとレールとクォーターがあればいいんじゃない?って思いがあって。カッチリしたストリートコースを作るんじゃなくて、D.I.Yセクションを持ち寄ったり自分達でいじれるような空間があれば、滑れる環境ってもっと増えていくと思うんですよね。俺らが若かった頃の時代だとそういうパークばっかりだったのもありますけど。コストをかけずに作れるだだっ広いパークが増えたらいいなって思います。
Capy: 確かに、俺らは色々なパークを作ってきて、最終的にこれなんだっていうのは理解している方だと思っていて、色々セクションがあるのも楽しいんですけど、今日みたいに土間にカーブとレール、マニュアル台だけ使うって流れになってきてるので、原点回帰じゃないですけど、この境地を味わえるのはパークビルダーの醍醐味かもしれないですね。

渡辺 雄士 / Yuji Watanabe
佐々木 優 / Masaru Sasaki
西川 誠 / Makoto “Capy” Nishikawa
Dickies
“Life Work”
feat. MBM PARK BUILDERS (HIDDEN CHAMPION issue #71)
Interview: publicdevice / Photo: Shingo Goya / Coordinator: Yuh Yanagimachi