EVERYDAY MAKERS | 高太郎

2023/11/15 EVERYDAY MAKERS

磨き続ける思い

「心を込めて作ってる人って、美味しいものを作るんです。細部に魂宿るじゃないけど、そういうとこも丁寧にやってる人って、いいものを作る。」 と話すのは、和食居酒屋「高太郎」の料理人でありオーナーの林高太郎氏。

渋谷駅から程近い路地裏にひっそりとお店を構え、入り口の茶色い扉を開けると林氏の明るい笑顔と挨拶、そしてこだわりのカウンターが出迎える。

「無駄なもんを削ぎ落としていきたいなって。あんまり装飾とかもつけたくないし、何もない目の前で調理する。」と林氏。世界を旅して色々な食文化を体験してきたからこそ作り出せる、アットホームで、親しみやすさを感じる雰囲気だ。

「高太郎はですね、楽しいお店かなと思いますね。元々美味しいって言われるより、楽しいって言われる方が嬉しいかな。」と林氏は語る。

そんな林氏がこの業界に進んだのは23歳の時。四国の香川で生まれ育ち、地元でのお祝い事で出てくるたくさんの魚料理や日本酒に親しみを持つようになり、自然な形で和食への道に進んだと言う。

林氏は池尻大橋の創作和食居酒屋KANで10年間修行を積んだ後、13年前にここ渋谷で「高太郎」をオープン。最近では2階のフロアには北海道から運んできたという、樹齢250年のナラの木で作られたカウンターがあるバーもオープンした。

「13年目でだんだん年月は重ねてますけど、どんどん磨き続けるっていうのがいいかなと思ってますね。」この思いは林氏の哲学でもあり、成長を続ける高太郎のベースとなっている。

チーム力が生み出すホスピタリティ

「コミュニケーションとチーム力って1番重要で、空気を作ることが仕事なんですよね。料理を作るのはもちろんですけど、空気を作ってチームを作ることは飲食店、空間作りとして必要だと思うんですよね。」と語る林氏は、スタッフとのコミュニケーションも欠かさない。仕込み中や営業中には話せない、普段のことや、それぞれの考えや悩みを聞いたり、スタッフと1対1で対話する時間を定期的に設けている。営業後に飲みに行って話すのではなく、朝にリフレッシュした状態で1人ひとりと向き合う。

「飲食店は人のビジネスですからね。マインド、気持ちが大事ですからね。その子達がいかに楽しく働くかってことが1番大切。」と林氏。20年以上飲食業界にいたからこそ、色々な人間関係のもつれを経験し、スタッフが楽しく働ける環境を意識して作り上げている。

林氏と高太郎で働く3名のスタッフは、1年に一度社員旅行として酒蔵巡りをして、その時の思い出を毎回アルバムに残しているという。思い出が詰まったアルバムは30冊にものぼり、アルバムを通して楽しかった社員旅行の思い出をお客さんともシェアしている。

「極力お店から、スタッフも僕も含めて、ストレスをなくしていく。初めから終わりまでリラックスして仕事に臨む。みんな元気よくおはようって言って、作業に入って、また今日も頑張ろうみたいな。その毎日同じ繰り返しですけど、それを常にアップデートしていく。」と林氏はチームとしての誇らしさを語る。

お客さんと作るリズム

「営業中も音楽がないですけど、お客さんの話し声とか、調理する音とかがリズムになって、それがまたお店の活気になる。」と林氏。水が流れるような、または空気のような、居心地の良い空間を楽しめるのが高太郎の大きな魅力の1つだ。

お客さんが左利きの場合や、嫌いな食材、その時オーダーされたもの、好みのお酒の飲み方など、来店されたお客さんの情報はいつも記録に残しているという。

「カスタマイズというか、お客様が来てくれて帰るまで、お風呂入ってる感じというか。何も言わずに出てきて、気持ちよく帰っていくみたいな。」と林氏は言う。
記録に残されたお客さんの情報だけではなく、ちょっとした挨拶などのコミュニケーションを通して、それぞれのニーズを汲み取る。風邪っぽい時には生姜をいつもより多めに入れてみたり、その人に合わせて味付けを薄くしたり、濃くしたり。そんなカスタマイズを自然な形で提供している。

高太郎では、素材と調理の組み合わせがきちんと考えられ、その時の季節に合わせたものがメニューに載る。
「全部現地に行って、作ってる人と会って、どういう仕事してるのかなとか話をする。自分が好きだな、長く続けたいな、5年10年一緒に仕事したいなって思う人とやってます。」と仕入れのこだわりを持つ林氏。休みの日を利用して、各食材の仕入れ先、また酒蔵などをしっかり見て回る。こういう思いの積み重ねや丁寧さが、林氏のお客さんのニーズに合わせた対応や、美しい料理に反映されている。

「美味しい、と笑顔になってほしいなっていうかね。それが1番ですかね。」と林氏。 ここ高太郎では同じ食事は二度となく、毎回が新しく新鮮に楽しむことができる。一人一人の会話、食器の音、調理の音が重なりその日々のリズムを奏でる。唯一無二の温かい空間、高太郎へ足を運んでみてはいかがだろうか。

店舗情報:
高太郎 (@kotaro_shibuya)
Tel:03-5428-5705
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町28-2 三笠ビル 1F